このサイトは潰瘍性大腸炎とクローン病の患者会の全国組織である、NPO法人IBDネットワークがNPO法人健康と病いの語りディペックスジャパンの許可を得て作成したものです
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
医療法人財団 健和会 臨床・社会薬学研究所所長 片平冽彦(インタビュー時の所属。保健学博士【東京大学大学院医学系研究科】
Q:他に何か病気をしたことによって考え方が変わったとか、対人関係が変わったとか、そういうようなことがありましたらお話いただけますか。
実は私自身は医者ではないんですが、医学関係の研究を、私の場合は中心テーマは薬害の問題なんですけれども、医学関係の研究をしてきて、それで病気の体験をしたことはすごい貴重なことだったと思っています。
患者でなければわからないということがありますけれど、その通りでその経験が自分の研究の姿勢にも影響を受けているということかなと。そこは大事なことかなと。健康な者、強い者には不健康な者、弱い者の気持ちがわからない、ということが一般的に言えるんじゃないかなと。逆に、ですから不健康であった者、病弱であった者はその病気の苦しさを知って、体験している、だからそういう患者さんに寄り添って医療関係の研究をするということが、その源となっているということじゃないかなと思います。
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
医療法人財団 健和会 臨床・社会薬学研究所所長 片平冽彦(インタビュー時の所属。保健学博士【東京大学大学院医学系研究科】
Q:先生のお考えになっていることを臨床的に、統計的に出されたことはあるのでしょうか。
私一人が良くなったんじゃ申し訳ないということで、実はこの研究はですね、お名前出して構わないと思うんですが、慈恵医大の消化器内科の先生方といろいろ共同研究をさせていただいて、それでその先生方は栄養士とタイアップして、協力して食事療法を中心として患者さんを治療すると、薬物(医薬品)も勿論使われていると思いますけれど、そういう特に食事改善に力点をおいて治療するという医療を行っているんですね。
私も患者としてもお世話になりましたし、研究を是非進めたいということで共同研究をさせていただいて、その結果を先生方がまとめたものがありますけれど、文献を調べてみますとそういう研究が全然されていなかったものですから、潰瘍性大腸炎の原因として食生活の、油のバランスというのが国際的な著名な雑誌には全然出ていなかったんです。ウィルス説とかですね、ほかの原因のことがいっぱい書いてあるという状態だったんですね。ところがそれを、その先生方の実践で得られた結果、データをこうやって英語の論文を書かれましたら、掲載されてそれが非常に国際的に反響を巻き起こしている、そういうことがある。これらの論文では私も(多少お手伝いをしたので)連名に加えていただいたんですけれど、私は医師ではありませんので、患者さんの治療はしていないんですが、こういう研究をするときはコントロール、対照群と言いまして患者さんを調べるとともに、それと比較するということで対照群、健康な人と比較するということが大事なので、健康な人で検査を受けてもらう人を探して病院に紹介するという役割をしまして、そういう点から連名にして頂いたということです 。
(編集者注)当サイトは特定の薬や治療法を推奨するものではありませんので、ここで片平氏が述べた食事療法についてもその有効性を保証したり、推奨したりするものではありません。
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
医療法人財団 健和会 臨床・社会薬学研究所所長 片平冽彦(インタビュー時の所属。保健学博士【東京大学大学院医学系研究科】
Q:今のお話を伺っていて、先生は今油に注目してお話をされたんですが、食材という観点からは、こういうものは良いとか悪いとかいうものはないんですか。
具体的にその比が「日本食品成分表」というのに出ているんですね。それで私から(その数値から)見て良い食品、食べ物というのは海産物、魚、特に青魚を中心とする海産物ですね。それから野菜類ですね。そうしたものが比としてはいいんです。それに対して肉類ですね、肉類などは結構逆なんですね。それから食用油、リノール酸系の食用油を使った食べ物というのは非常にアレルギーとかこうしたIBDのような病気を増やす方に作用しているんじゃないかということです。
実は、このことを経験して、研究もして、テレビでお話したかったんですが、テレビはどうも「御法度」のようです。つまり(関連食品の)広告をバンバン出していますよね、そういう関係の食品の、そうしたものを多く摂らない方がいいという話はテレビ局にとって具合が悪いことなので、ストップになりました 。そのときは。
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診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
医療法人財団 健和会 臨床・社会薬学研究所所長 片平冽彦(インタビュー時の所属。保健学博士【東京大学大学院医学系研究科】
具体的には脂肪酸バランスと言っていますが、この比を測定する検査を健康保険に取り入れていく。そうすると医療(の場)で盛んにおこなわれるようになりますので、検査を促進するようにすべきだと言ったんですが、現在までは一部の病名で保険適用になっていますが、部分的なのでどうしても患者負担、あるいは医療機関の負担になるということなのであまり行われていないです。それから、比の測定検査を健康診断項目に入れたらこれはすごいことだなと、世の中すごく変わっちゃうんじゃないかなと思ったんですが、病人が大幅に減るんじゃないかと思ったんですけどね。そうなっていないですね。
それから病院給食を改善するということ。具体的には病院給食でオメガ6を減らしてオメガ3を増やすような食事を出すということによって、患者さんに良い影響を与える、特に心血管系の病気の場合ですね。それからアレルギー性(疾患)の場合だとか。それから薬局で薬剤師が服薬指導をする場合にそういう関係の病気の人に対しては食生活も改善するようにアドバイスしたほうが良いということです。このへんは先ほどの奥山先生も盛んに強調されていることなんですけれど。そういうことを世の中全体として心がけるようにしたら日本人は、長生きするようになったということですけれど、しかし「健康で長生き」ということになっていないですね。結構「病気で長生き」という状態になっているのは非常に本人にも辛いし、周りの家族も辛いわけなんで、その点を健康で長生きするような社会に変えていくということが必要で、そのために非常に重要なポイントではないかなと私は思っています 。
(編集者注)当サイトは特定の薬や治療法を推奨するものではありませんので、ここで片平氏が述べた食事療法についてもその有効性を保証したり、推奨したりするものではありません。
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
医療法人財団 健和会 臨床・社会薬学研究所所長 片平冽彦(インタビュー時の所属。保健学博士【東京大学大学院医学系研究科】
これはこの研究についていろいろご指導頂いた奥山治美先生という名古屋の薬学の先生がご本(注1)に書いておられるものでそれを私も真似をして実践しているということです。それでお寿司を含めて魚はほぼ毎日食べました。今でもそのような食生活を続けています。その結果先ほどお話したように食生活を改善して、病状が良くなってきてその経過をここにまとめたんですけれど、非常にびっくりしたんですが、それまでアレルギー性鼻炎の治療を減感作療法という治療法で受けていたんですが、もう良くなっちゃって、それを受ける必要がなくなっちゃたんです。これはびっくりしました。
それからこの比がオメガ6とオメガ3の比で、検査の数値なんですけれど、1対1に近づいた。(図2)これは棒グラフで絶対値では非常にでこぼこがあるんですけれど、この折れ線グラフが大事で、ここが1.0ですね。比が1という、オメガ6とオメガ3の比が。ちょうどのその1を前後していますね。それでこれを主治医の先生に報告しましたら主治医の先生がびっくりして、え、こんな日本人いるの?と言われたぐらいで、厚労省の目標値が4なんですけれど、欧米人なんか軒並み10以上じゃないかと言われていて、もっと高い人もいっぱいいるということですね。だから、ヨーロッパなんかでは欧米ではもっとこういうことを研究すればいいんだけれど、食生活が全般的にリノール酸過剰になっているから、研究が適切にできないということじゃないかなということだと思います。
(注1)「薬でなおらない成人病」(黎明書房)
(編集者注)当サイトは特定の薬や治療法を推奨するものではありませんので、ここで片平氏が述べた食事療法についてもその有効性を保証したり、推奨したりするものではありません。
図2へのリンク
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
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それでこの図(図1)がすごく大事なんですけれど、こちらがアルファリノレン酸の流れで、こちらがリノール酸の流れです。私たち人間が油を摂取した場合にこのリノール酸を体に入れますと酵素の働きでアラキドン酸になってその後ですね、アラキドン酸がやはり酵素の働きでこうしたものに体内で変わっていくということです。これがそのアラキドン酸カスケードと言っているのですが、カスケードというのは滝のことです、それで日光の華厳の滝みたいにまっすぐに落ちるのはフォールと言っていますが、茨城県の袋田の滝のように岩を伝って落ちる滝はカスケードといいます。ですからアラキドン酸カスケードと名付けられているんですけど。それで体内で流れが進んでつくられるのがこうしたプロスタグランジンとかトロンボキサンとかそれからロイコトリエンの4系列といっているんですけれど、そしてこうしたものが体内でたくさん作られると炎症を促進する。それから血栓を作る。それからロイコトリエンの系列はアレルギーとか炎症を促進するということがいろいろと研究でわかっています。
一方アルファリノレン酸の流れはこの辺で似たような名前のものになるんですけれど、違うところはこちらが偶数系列に対してこちらは奇数系列ですね。こちらの流れはこういうふうに流れていって炎症とか血栓、アレルギーを促進しないということがわかっています。実はこの研究は「アラキドン酸カスケード」の研究ということで、研究した人はノーベル賞をもらっているくらいの研究なんですね。残念ながら日本人の研究ではなくてサムエルソンという外国の研究者の研究なんです。もしこれがその通りだとしますと、この図によって治療方法がわかる。どういう治療法かというと、こちらの方の流れを促進しないで、こちらを促進する。つまり、もととなるリノール酸を減らしてアルファリノレン酸、あとEPAとかなってくるわけですけれど、そちらの方を増やすと。それによってバランスが変わりますね。そういうことをすれば炎症とか血栓とかアレルギーが減らせるんじゃないかと。
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図1へのリンク
診断時54歳、インタビュー時71歳(2016年4月)男性 関東地方在住 一度再燃したが薬物治療と食事療法により寛解(無症状、本人は「全治」と自己診断)が続いている。妻と娘夫婦とその子供二人の6人家族。
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9月にテレビでこの病気についてある先生がお話をするという情報を得まして、ちょうどそれが退院した後でしたが、それを一生懸命録画して見ました。そしたらですね、その先生のお話は油の取り方の問題が関係しているということだったんですね。それでそれを調べる必要があると考えまして、具体的にはここにあるような仮説が立てられるのではないかと考えたんです。それは炎症性腸疾患、このクローン病も含めてですが炎症性腸疾患のIBDの発生とか増悪とか再燃にリノール酸、これは化学構造で端から数えて6番目に二重結合がある、そういう化学構造なのでNマイナス6と言っていますが、あるいはオメガ6という言い方をしていますけれど、その系の脂肪酸です。これは植物油に多いですね。よく世間で動物油は悪くて植物油はいいという俗説があってそういうことを言われる方もおられるんですけれども、私は植物油に多いということを確認しています。そうしたものを摂取しますとこのIBD(への罹患・悪化)が促進される。それに対してアルファリノレン酸、Nマイナス3、オメガ3ですね、その系統の油、脂肪酸。これはシソ油だとか魚の油に多いのですが、そうしたものを摂取するとIBDに対しては抑制的に、抑えるように作用するということで、重要なのはこの摂取比ですね。オメガ6とオメガ3の摂取比、これが上昇すると、つまりオメガ6の方を多くとってオメガ3の方が少ないと上昇しますね、比が。そのことがIBDの発生、増悪、再燃の少なくとも一つの要因となっていると、こういう仮説をたてたんです。
そこでですね、研究で最初にやるべきことは、それに関しての先行研究がどのようにこれまで行われてきたかということなんですね、文献を調べることなんです。それで文献を調べて見たら、いろんな面で、疫学的研究の面で統計的な比較ですね、また臨床的実験的な面でもそのことを示唆している研究が一定程度あるということが分かりました 。
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